食材の特価情報の一覧、情報満載でとても便利なサイトを集めました

　お盆休みがあるのは民間だけで、

　地方公務員の私にはない。

　別に親族に不幸があった訳ではないので、

　型通りのお墓掃除や仏壇にちょっと豪華な供物を、

　連れ合いが何時の間にか済ませ供えてあった。

　私は連れ合いのつくってくれた弁当を鞄に納めると、

　「行ってくる」と言って家を出る。

　連れ合いが、

　「行ってらっしゃい、気を付けて」と言い、

　私は何時ものように「おう」と鸚鵡返しに応える。

　私は自分が有能だとは思っていない、

　そこそこの人生を送ることができれば十分だと思っている。

　仕事は可もなく不可もないというところだろうか、

　年齢相応の地位をいただいている。

　そんな私の唯一の成功は、

　連れ合いと巡り逢って結婚できたことだ。

　連れ合いの容姿は十人並みで、

　私には勿体ないくらいだった。

　連れ合いの本当の凄さを知ったのは、

　結婚後の食卓と弁当だった。

　結婚を機に両親宅から離れてから、

　連れ合いはそれまで隠していたのではと思える程、

　家事、

　特に料理にその腕を振るい始めた。

　地方公務員の俸給は安定してはいるが、

　決して豊かではない。

　連れ合いは将来を勘案しながら廉価な食材で、

　私の胃袋を掴んで現在に至っている。

　廉価な食材をとてもそれだとは感じさせない変化を、

　連れ合いは加える。

　だから、

　私は連れ合いの美味しい弁当を食べたいが為に、

　職場に通い、

　連れ合いの美味しい夕食を食べる為に帰宅しているのだと、

　心密かに想っている。

　連れ合いは公務員の貧乏所帯なのに子を四人も産み育ててくれた。

　全ては連れ合いの倹しい生活が可能にした。

　四人の子ども等は、

　連れ合いのつくる美味しい料理のお陰で、

　心身共に私を遥かに凌駕している。

　よく食べ、

　よく遊び、

　よく学んだ。

　連れ合いは、

　私の仕事や出世に対して文句を言わず、

　昇進すれば素直に喜んでくれた。

　結婚適齢期の後輩には、

　たった一言、

　「料理上手な女の子を…」と言う。

　私の数少ない実体験からのものだ。

　今日も電車に揺られながら夕飯の献立を考えている。

　連れ合いの割烹着姿が浮んでくる。

　若い頃は見惚れてしまうくらいワンピースが似合っていた。

　はっと気付いた。

　連れ合いは今でもその体型を維持しているのだ。

　　・・・・・・・・・

　私の愛する私の全てであり私だけの掛け替えのないえむえぬ様に。