豪華 くらしに響きを。
ー 爆弾解除リミットまで 残り6時間 -
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「はぁっ!はぁっ!!」
「ど・・どうした?そんなに慌てて・・・?」
「こ・・これ・・・」
「何?」
「これが今店に・・・届いた・・・」
「届いた・・・ッて?」
『!!!?』
その時
店に赤と白の手紙が揃った瞬間
俺の名前を呼ぶ翔の声が聞こえたような気がした
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
- 智くん・・・ -
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
『・・・・っ!?』
1つは爆弾魔からの挑戦状
もう1つは極秘ミッションだ・・・
一見すると、とある場所に仕掛けられた爆弾を解除し
その場にいる人達を無事に救出せよという
いつものミッションの様に見える
ただ・・その時の俺の中では
目の前に揃った手紙の向こう側は1つに繋がっていて
辿り着いたその場所には間違いなく翔くんがいると思えたんだ
だから雅紀が持ってきた手紙を開けて見た瞬間に
ある場所へと向かって走り出していた・・・
「・・・・・はぁ」
そこは俺達の昔からの根城の1つで
俺が初めて翔を抱いた部屋でもあった
都会から少しだけ離れた公園のすぐ近くにあるボロアパート
もう誰も住んでいないアパートの前には
取り壊しの立て札が立っていて
そこを訪れるような人は今はもう誰も居ない・・
そんなアパートの一階の一番端の部屋には
擦り切れた畳の上には開けたままの段ボールと
マットレスの隅に穴が開き、中の綿が外へと出ている
簡素なパイプベッドが1つおいてある
俺はその部屋の扉をそっと開けると
周りに妖しい奴がいないかと左右を確認してから
ゆっくり室内へと足を運んだ・・・
ギッ・・・
ギシッ・・・
「・・・・・・・」
玄関を入ってすぐにシンクや、トイレには薄らと埃が溜まっていて
長い間使った形跡がない事がすぐに分かる
俺はそれらを1つ1つ横目で確認しながら
真っ直ぐにベッドの置いてある部屋へと向かい
乱れたままのベッドがある事を確認してから
更にその先にある窓ガラスに向かって大きく息を吐きかけたんだ
翔くんからの手掛かりが其処にあると信じて・・・
(翔くん・・・)
「・・・・・、はぁ~~~っ」
俺は自分のかけた息の場所にジッと目を凝らす
「・・・・・・・・」
でも・・そこには何もなくて俺はちょっと悲しくなった
俺はなにも映さない窓ガラスにそっと手をやりながら
聞こえる筈のない翔の言葉を聞き取ろうとゆっくりと瞼を閉じる
(翔くん・・・伝言は?)
するといつの間にか
自分の心の叫び声が言葉となっていたんだ・・
「俺へのメッセージは?ないのか?」
「さっき俺の名前を呼んだだろ・・?」
「直ぐに迎えに行ってやるから・・
だから・・お前の声を聴かせてくれ・・・頼むから・・・」
シーーン
「・・・・・・・」
俺はそう呟きながら
そのままコツンとガラスに額を当てながら
もう一度大きくため息を吐く
「はぁ・・・・」
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- S→Sへ
空と海は
月と
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「!!!?」
すると・・さっきとは違う場所が曇ってそこに何かが浮かび上がって来た
俺は慌ててその場所に向かってもう一度息を吐いてみる
そして次の瞬間
俺はお前からの声を
やっと聴くことが出来たんだ・・・
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- S→Sへ
空と海は同じ色、照らし出すのは赤い太陽
月の道と虹色の魚だけが暗い海を渡る
LV ー
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「これ・・」
最初の一行は俺が前に書いた奴だ・・・
でもその後に書かれてあるこれは・・・?
「間違いなく翔だ・・・」
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ー 月の道と虹色の魚だけが暗い海を渡る -
?
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「・・・・・・・、海?それってもしかして・・・?」
そう、俺はこの言葉を見た瞬間
今朝、潤と一緒に訪れた場所で見た
あのポスターが目の前に浮かんだ
そしてその時八百屋さんが楽しそうに話してくれた話の内容が
一気に頭の中で蘇って来たんだ
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<今ね”アルテミス”って言う豪華客船がすぐ近くの港に停泊しててね
航海に必要な食材やらなにやらたくさん積み込んでるんだ
だからもうてんやわんやで大忙しなんだよね~
え?あぁ・・そうそう、確か今夜だっと思うよ?この花火大会>
<この市場も協賛してるから
もうちょっと早く声をかけてくてたら乗船チケットも取れたかもしれないけど
元々人気のある船だし、それに何でも今回は
”船の上から花火を見よう”と言う企画で更に人気が出て
あっという間に乗船チケットが完売してしまったらしいんだ・・・>
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俺はその時聞いた八百屋さんの言葉をはっきりと思い出し
どうしても解らなかった”あの意味”がやっと理解できたんだ
!?
「あ・・・そうか・・!
だからミッションコードが”アルテミス”だったんだ・・
そうか・・アルテミスって・・船の名前だったのか・・」
そっか・・・
じゃ、もしかして
アイツらはその場所で翔くんを・・・?
「・・・・、ふざけんなよ」
そんな事絶対にさせない!
翔くんを・・・死なせたりしない!!
俺が絶対に助けてやる!!!
だから
「待ってて・・翔くん
俺が必ずお前を助けてやるからな・・・」
俺は逸りそうになる自分の心を抑えるためにわざとそう言葉にし
ギュっと瞼を閉じて精神統一してから腹をくくった
俺は最後にもう一度、
窓ガラスに映る翔くんの言葉を指でそっとなぞってから
一気に立ち上がりその
まま振り返らずに部屋を出る
そしてアパートが視界から消えた時
ある人物に電話をかけた・・・
続く
豪華 しかし、泥棒にだけは、やさしくない家です。
おはようございます。