食材は只今人気沸騰中、リアル店舗にない楽しい表現でショッピングできます
「ラーメン屋?」
出前で取った朝飯をつついていた手が止まる。元々朝はあまり食べないし乗り気じゃなかったがスンリに付き合ってゆっくり箸を進めていたものの、突然思わぬ話が飛び出して完全に食べる気を失った。
「誰が?」
「だから、僕が」
スンリはそんな俺にお構いなしに頬いっぱいに含んだご飯をソルロンタンで流し込んだ。
今日は2人とも昼から仕事だ。だから朝はゆっくり起きて、ここから一緒に事務所に向かうつもりだった。
今日終わったら何時に帰るかとか話しながら、最近スンリがちょくちょく日本に行っていることを思い出して何の気なしに何か用事があるのかと聞いたら予想もしない答えが返ってきた。
「何で?」
「何でって…ヒョンだって日本のラーメン好きでしょ?いろんなラーメン食べるうち、自分でもおいしいラーメン屋開きたいなって思ったんだよ」
開いた口が塞がらない。
ラーメンが好きだからラーメン屋を開く?そんなの、まるで小学生の書く『将来の夢』じゃないか。
「お前…事業ってそんな簡単に始めるもんじゃないだろ」
俺はスプーンを机の上に置いた。とても聞き流せない話だ。
「簡単に始めてないよ。何度も日本に行って店長とも話し合ってきたんだ。おもしろかったよ、食材もちゃんと自分の目で見に行ってさ。信頼できる人としか契約してない」
―お前に人を見る目があんのかよ
辛辣な言葉が口をついて出そうになるのを辛うじて堪えた。別に無闇に非難したい訳ではない。心配なのだ。
スンリはこうと決めたら突っ走るクセがある。世の中にはいろんな人間がいて、俺たちを食い物にしようとしているようなヤツなんて五万といる。BIGBANGとしての仕事であればある程度事務所に守られるが、個人で始める事業に関しては100%自分で責任を負わなければならない。付き合う人間も本当に信頼のおける人物なのかどうか、見極めていかないといけないのだ。
以前、スンリはちょっとした詐欺未遂に遭った。だからこそその経験を思い出してもう一度きちんと考えて欲しかった。
でも今俺がそんなことを言っても真意が伝わらないような気がする。ただただ口うるさいと思われそうでヘタなことは言えなかった。
「事務所は知ってんのか?」
「当たり前じゃん」
―何だよ、何で誰も言ってくれないんだよ
どこかで耳に入りそうなのに、少しくらい相談してくれてもいいのに、誰からもそんな話は聞かなかった。
「とにかく、もう一度きちんと考え直してみろよ」
「何で?」
正直口答えされると思わず、驚いてスンリを見返した。
「何でって…これからツアーもあるし忙しくなるだろ」
年明けの開店を目指すそうだがツアーもあればタプヒョンの入隊を間近に控えてテレビの出演など本国での仕事も増えるはずだ。それにいよいよタプヒョンが
入隊したらしたで今度はそれぞれのソロ活動が本格化するだろう。
もしかしたらスンリはそこまで考えていなかったのかもしれないし、それなら開店の時期を見直すついでに事業を始めること自体もちゃんと検討して欲しかった。
「…そんな風に言われると思わなかったな。活動ならちゃんとするよ。僕、一度も仕事飛ばしたりしてないでしょ?」
「そうだけど」
それとこれとはまた話は別だ。プライベートを理由に仕事を飛ばすなんて問題外の話だ。
なぜスンリがそんなにラーメン屋にこだわるのかが分からず、だんだん苛立ちが募る。
「ヒョンだってファッションブランド立ち上げたじゃん」
「俺のは、細かい経営のことはオーナーに任せてるし…。それに俺はデザインの仕事もBIGBANGとしての活動の一環だと思ってる。作詞や作曲と同じように自己表現のひとつだし、それを通じてもっとG-DRAGONを感じてもらいたいからやってんだよ」
俺はクォン・ジヨンでありG-DRAGONだ。
G-DRAGONの名前が世間に知れるようになるにつれて窮屈に感じることも少なくなかったが、やがてクォン・ジヨンとしてだけの自分の人生など考えられないことに気がついた。
それ以来迷うことなくクォン・ジヨン、そしてG-DRAGONとしての人生を歩んでいる。
最近立ち上げたブランド『PEACEMINUSONE』も、G-DRAGONとしての世界観を強くイメージしていた。『PEACEMINUSONE』はBIGBANGの広告塔でもあると俺自身は捉えている。ラーメンが好きだからラーメン屋をやるというスンリの意見とは違う。
「僕は違うって言いたいわけ?ヒョンは全体のこと考えてて、僕は自分のことしか考えてないみたい?」
ハッとした。スンリは明らかに機嫌を損ねていた。
頭ごなしに言い過ぎた。やっぱり、口うるさいだけだと思われている。
「そうじゃなくて、お前に傷ついて欲しくないだけ」
本心だったが口に出すと随分安っぽいセリフに聞こえる。
俺はスンリに“そら見たことか“というような世間の目を向けさせたくなかった。後悔というものは後ではできないのだ。
「うまくいかないって、決めつけるんだね」
「違うよ!」
否定したものの、後の言葉が続かなかった。そんなつもりないのに、何か言えば言うほど深みにハマっていく。
「うそだよ。分かったよ。ちゃんと考える」
黙ってしまった俺を見かねてか、スンリは自分が引くかたちで会話を終えたが、表情は固いままだった。
その後何でもない世間話をしたけど、それが逆に“事業のことに関してはもう何も言うな“と牽制されているように思えた。
だから何だか気まずくて、俺たちはほとんど話をすることなく事務所へ向かった。
電撃復活! 食材が完全リニューアル
大阪堺市にある鮨弥助。
いつものように鮨あらいで食事をしていて新井さんと雑談。新井さんから、
『来週大阪に行くんですが、大阪らしいお店、教えてくださいよ。』
新井さんへは通天閣の下にある洋食屋を紹介し、新井さんからはこの寿司屋を教えてもらいました。
じゃあ、鮨あらいの常連を代表して表敬訪問してこようか。
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堺市宿院。心斎橋から路面電車に乗ったりして、かなり時間がかかりましたが、南海難波からはすぐなんですね。
りっぱな一軒家。
メインのカウンター席で相手をしてくれたのは四代目。まだ30歳代前半。
このほかにも、カウンターのある部屋が2室、テーブル席の個室があって座敷もあってそれがビルではなく情緒ある一軒家。
行くだけでも価値がある?とそんな店。当主は老舗弥助の三代目です。三代目、四代目から手厚いおもてなしをいただき。
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ハートランド
他のお客さんを三代目の別室カウンターに案内してくれて、四代目とずっと寿司談義。
和食の修業もしてきた四代目は、新しい息吹をと奮戦中。新井さんとのご縁でまた新しい気持ちになったそうです。
*お通し
葛素麺、煮凝り、じゅんさい
握りの前に是非と言うことで。ひんやりとしてとてもおいしく、最高のアペタイザーです。
このお通しで日本酒から始める御仁はかなり呑んじゃうような印象で、胃への刺激がたまんないすね。
①剣先烏賊
緊張の最初の一貫。
手の持った瞬間にその店の握りを感じます。
やや小ぶりではありますが、細っこちい握りではなくまあるくふっくらした感じの形状で好きなタイプ。
シャリは硬めで酢は今どきのはやりからすればおとなしい感じ。このくらいがネタと合わせたときにはネタがあぶりだされていい感じになります。
烏賊でしたからこの酢が合っていると感じたのかも知れません。
前の月の遠征が北九州でしたから、それと比較すると、と注釈を入れた方が正しいかも。
②中トロ
ボストン産の生。これがちょうどいい熟成で4貫くらい食べたかった。
近海マグロが端境期で取り合いの状況ですが、そんな中貴重なマグロですね。
③こはだ
斑点の大きさから見て、かなりのサイズだと思いました。
10cm以上のナカズミクラスの斑点。したがってしっかりと熟成して、こはだの爽やかさよりもナカズミの旨みを引き出した1貫です。
1か月熟成と言うことでしたので、ワタシはジブンの中で納得。
④車海老
茹での海老色ではないので?と思いました。低温調理とのこと。
低温調理では、生とは違う、茹で焼きとも違う新しい味わいで、食材によってはとびっきりの旨みに出会うことも珍しくありません。
車海老自体がもう味の深いものですから、低温調理によってぐんと甘みが増して上等な握りになってます。
が、低温調理で1貫食べるなら、鮨あらいで一番好きな、茹でたてのアツアツの車海老も食べたい。茹でを捨ててまで、放棄してまで低温調理を食べたいとは思わないワタシ(笑)。食べるならどっちも食べたい。
⑤アマダイ
皮目をちょっと炙ってますね。うまし。
⑥鯵づけ
⑦毛ガニ
⑧大トロ(じゃばら)
⑨新子3枚付け
⑩いわし
先週今週と北海道産のいわしが旨かったのでお訊きしたら、岸和田産。地元でうまい魚が上がるのが一番。
*限定 黒龍大吟醸しずく
⑪ホタテ
低温調理。
⑫あかむつ
燻製してます。
⑬赤身
⑭鱒の子
⑮手巻き・雲丹
最高です。今日一。
⑯穴子
*カステラ
意欲的な寿司の数々。
次回の訪問を楽しみにしてます。 今回の一つの目玉でした。
これで、関西に行ったら、鮓きずなと弥助の2軒は行きたい。